
睡眠関連の本ってたくさんあるけれど、どれかおススメはある?
今回は、このような悩みに対してお応えしていきます。睡眠に関連する書籍は多くありますが、はたしてどれが良本なのか分からないという人も多いと思います。
私も若い頃に昼夜逆転生活をしており、夜型がすっかり定着してしまいました。睡眠薬を投薬していた時期もあるので、睡眠に関する悩みは長いこと抱えています。
今では多少マシになったものの、「朝起きるのがつらい」「日中に眠くなる」など、軽度の悩みは抱えたままです。睡眠への興味、関心があり色々試してきました。
そんな中で「スタンフォード式 最高の睡眠(著者|西野精治)」が気に入ったので今回はこの書籍をご紹介します。
本書によれば、自覚症状の有無や症状の軽重に関わらず、睡眠に関する何かしらの悩みや疾患を抱えている人は多く、特に日本人は世界的に見ても睡眠不足が顕著なようです。
また、睡眠障害に関する歴史は古く、さかのぼると平安時代まで文献があります。現代においても、睡眠に関する研究は続いていますが、まだまだ未知の領域が多い分野です。
「どうせ買うなら、信頼できる本を手にしたい」と思いますので、本を選ぶ上での参考や、睡眠に関して悩みを抱えている人のヒントになれば幸いです。
「スタンフォード式 最高の睡眠」おすすめポイント3つ

それでは、数多くある睡眠本の中から本書をおススメする理由を3つ挙げていきます。本書の要約や内容に関する紹介は次の章でふれていきますので、内容だけを知りたい方は飛ばしてOKです。
・権威性(最新の睡眠科学研究所で所長を務める研究者)
・信頼性(すべて実証実験・研究データに基づいている)
・具体性(方法が具体的なので、すぐに取り入れられる)
おススメする要点としてはこの3つになります。では、順に各項目について、それぞれ詳しく解説していきます。
Point.1 権威性
どのような人が著者なのか、どんな根拠に基づいてそのことを書いているのか。肩書がすべてではありませんが、どこのだれが著者であるかは確認すべきでしょう。
本書の著者である「西野 精治」氏の簡単な略歴を引用します。
西野精治 氏
EUPHORIA
医師・医学博士スタンフォード大学睡眠生体リズム研究所(SCNラボ)所長
大阪医科大学卒業後、2年間大阪で研修医を務め、1987年、大阪医科大学大学院からスタンフォード大学医学部精神科睡眠研究所に留学。突然眠りに落ちてしまう過眠症「ナルコレプシー」の研究を行う。 2005年より現職であるSCNラボの所長に就任。以降、睡眠・覚醒のメカニズムを、分子・遺伝子レベルから個体レベルまでの幅広い視野で研究している。 「睡眠の謎を解き明かして社会に還元する」を命題としており、多くのアスリートから支持されている「エアウィーヴ」の開発研究にも携わった。
「スタンフォードだからすごい」とか「エアウィーブの開発研究に携わったから信頼できる」ということにはなりませんが、第一線で睡眠に関する研究に長年携わっており、ご自身の研究分野において大きな成果を収めている方であることは確かです。
Point.2 信頼性
先にも述べましたが、著者の西野氏は大学教授であり、一研究所の所長を務めています。適当なことは当然書けないですし、ラボや大学の看板を背負って本書を書いています。
そのため、本書で出てくるメソッドや睡眠のメカニズムについては「こんな研究があって、こんな報告が上がっている」という科学的根拠に基づいた書かれ方をしています。
実験の概要や専門用語がバンバン出てくるので、頭がパンクしそうになりますが、どういう根拠があってそのようなことを書いているか、ということをとても大切にされていることが分かります。
ここで、1つ本書の中で触れられていた「通説」に言及した部分を紹介します。
よく、睡眠時間は「90分の倍数時間」で眠ると良いと聞いたことがないでしょうか。私も聞いたことがあり、入眠の30分を含め、いつも90分の倍数で起床時間をセットしていました。
しかし、実際は、スリープサイクルには90から120分と開きがあることが分かっており、個人差があるようです。そのため、それよりも最初の入眠をしっかりこだわる方が良いのです。
また、「短眠術」というようなタイトルの本が昔書店に並んでいましたが「ショートスリーパーは遺伝」であるということが分かっており、学術誌でも発表された研究があるとのことでした。
睡眠は、因果関係も複雑で研究にも膨大な時間がかかる分野です。未解明が多いからこそ「これが良い」「これが効く」というような、根拠不十分なメソッドが流行しやすいのだと思います。
だからこそ、「何をもってその方法を提示するか」ということについて、一研究者としての配慮が感じられ、読んでいてとても好感を持ちました。
Point.3 具体性
おすすめポイントの3つ目は、「具体性」です。本書では良質な睡眠を得るために、入眠前と覚醒時に関して、それぞれスイッチがあり、そのスイッチを入れる方法を挙げています。
誰でも実践できる内容なので、今日すぐに取り入れることができます。また、当然のことながらその根拠やメカニズムについても詳しく説明が書かれているので納得感があります。
「神経伝達物質がどうのこうの」「サーカディアンリズムが云々」と、専門用語が多く登場しますが、興味がそこまでない人にとっては、少し冗長に感じられる可能性があります。

こむずかしい話はいいから、早く方法を教えて欲しい!!
という方は、本書の3章以降から読めば、方法論に沿った内容進行になるので「途中から読む」というのもありだと思います。次の章で、一部私が実践したメゾットをご紹介します。
「スタンフォード式 最高の睡眠」内容紹介

それでは、本書の内容を一部紹介します。本書では、良質な睡眠を得るために「入眠前」と「覚醒時」に分けてそれぞれ方法論を展開しており、その中でも実践しやすいものを選びました。
・黄金の90分とは何か?
・睡眠の2つのスイッチ
・12の覚醒戦略
・「昼食を食べると眠くなる」は本当?
・【おまけ】著者監修のECサイト
黄金の90分とは?
本書で度々登場する言葉として「黄金の90分」というものがあります。これは、眠りはじめの最初に訪れるノンレム睡眠とレム睡眠の第一周期のことを指します。
そして、本書ではこの「最初の90分」の眠りの質(深さ)をいかに高めるかが、睡眠の良し悪しを左右すると書かかれており、深める方法を知ることができます。
睡眠は、自律神経を整え、正常なホルモン分泌を促し、脳と体のコンディションを整える大切な生理作用。これらが規則正しく機能しないことで、様々な疾患の原因にもなります。
逆に、睡眠の質、つまり最初の90分の睡眠の質を高める努力をすれば、体の健康維持と日中のパフォーマンス向上につながり、睡眠を味方につけることができるということです。
但し、最初の90分さえ良く眠れれば良いのかというと、そういうわけではなく、出来る限り規則的な生活と十分な量の睡眠時間が確保できているということが前提となります。

理想的な睡眠時間といつ頃眠りにつくのが良いか知りたい!
本書では、理想的な入眠時間は23時から0時頃としています。また、睡眠時間については、個人差がありますが、休日に「寝だめしてしまう」という場合、平日の睡眠が不足している可能性が高いことを示唆しています。これがたまると「睡眠負債」としてサイクルが乱れ、様々な疾患の要因になります。
規則正しい生活を心掛けていても、寝付けない場合や、いくら努力しても寝覚めが悪く、日中何度も眠くなるという場合は、その他の精神疾患や睡眠時の疾患(睡眠時無呼吸症候群など)である可能性もあるため、専門医に診てもらうことも方法の一つです。
睡眠の2つのスイッチ
睡眠には2つのスイッチがあり、これらをうまくコントロールすることで、「黄金の90分」を得られやすくなります。2つのスイッチとは「脳」と「体温」です。
スムーズな入眠を得るためには「深部体温」と「皮膚温度」の差が縮まっていることが理想であり、脳をいかに興奮させないかがポイントとなっています。そのための具体策を幾つかご紹介します。
・就寝前3時間以内の食事をしない
・寝床ではスマホなどをひらかない
・頭は蕎麦柄マクラなどで温めない
・就寝の90分前に約40℃で入浴
・靴下をはいたまま、眠らない
・就寝前に激しい運動をしない
雑な要約をすると、眠る3時間前は脳を稼働させず、照明を落とし、入浴で深部体温を上昇させてから手足の皮膚から熱放散をさせて、深部体温が下がるようにコントロールしようってことです。
特に、実際に実践して効果として実感しているのは、入眠90分前の入浴です。また、寝る直前までPCやスマホ、漫画を読んだりしないよう、布団では寝る以外の動作を控えるのも効果絶大でした。
もちろん、なぜそんなことをするのか、理由とセットで理解しておいた方が良いことは言うまでもありませんので、本書で理解を深めることをお勧めします。ここで紹介しているのはごく一部です。
・寝る前に酒を飲むのは?
・ホットの飲み物はいい?
・寝る前の読書はいいの?
等々、自分の普段の生活と照らし合わせて読んでみると、「ここは変えた方が良いかな」とか「今まで逆効果なことをしていたかも」という発見があるかもしれません。
12の覚醒戦略
本書では、良質な睡眠(黄金の90分)を得るためには、睡眠時や入眠前と同じくらい、覚醒時の行動が重要だと説いています。覚醒のスイッチを入れ、リズムをつくっていくことが重要です。
覚醒におけるキーワードは「光」と「体温」。ここでも体温がポイントになってきます。良質な覚醒が良質な睡眠を生む好循環。そのための12の覚醒戦略のうち、一部をご紹介していきます。
1.アラームは2段設定
2.裸足で朝活動をする
3.食事では咀嚼を意識
4.夕食を抜かないこと
最初の「アラームの2段設定」とは、「体をレム睡眠中に起こす」ことを目的としています。その方が、体が反覚醒状態でスムーズな起床ができるからです。
具体的には、起きたい時間の20分前に小さな音でアラームを設定し、起きたい時間は通常のボリュームで設定をします。スヌーズ機能ではオフにしておきます。

上の図の黄色の矢印がレム睡眠中です。レム睡眠時は、体が半覚醒しているので小さな物音でも目が覚めます。逆に青矢印のノンレム睡眠中であれば、眠りが深いので寝覚めにくくなります。
1つ目のアラーム時に、ノンレム睡眠中でスルーしてしまったとしても、約20分後にはレム睡眠中になっている可能性が高いため、2つ目のアラームでスッキリ起きられるという仕組みです。
寝起きでしっかり覚醒するためには、手や足の皮膚を刺激することも効果的です。朝起きたら顔を洗うように、手足に冷水を浴びせることで、体の覚醒スイッチが入り、覚醒モードに切り替わります。
枕元に、飲む用の冷水と足水用のバケツを用意しておくのもお勧めです。起きた瞬間の眠気をこらえ、一度水に浸かれば、睡眠不足でない限りしっかり目を覚ますことができます。
また、咀嚼やカフェインを適量摂取することも、体の覚醒を促すことに効果的です。特に咀嚼は効果が大きいと実感してから、意識してゆっくり噛むように食事することを心掛けています。
入眠前の空腹は、逆に覚醒を促してしまうので、本書では夕食を抜くことを推奨していません。寝る直前や食べ過ぎはよくありませんが、それと同じくらい空腹のまま眠るのも、睡眠の妨げになります。
「昼食を食べると眠くなる」は本当?

午後になるとやってくる眠気のことを、本書では「アフタヌーンディップ」と説明されており、曰く、これは昼食を抜いても食べてもやってくる生理現象である可能性が示唆されているとのことでした。
消化することで消化器官には大量の血液が集まるものの、消化時でも脳血流は第一に確保されるため、午後の眠気の要因は血流の問題(昼食を取ること)ではないと、本書では説明されています。
もちろん、睡眠不足の解消や黄金の90分の質を高めることで、眠気の頻度を減らすことはできますし、大量の昼食は血糖値の上昇につながるので、適量を心掛け、しっかり咀嚼することが必要です。
特に、私が効果的だと感じたのは、咀嚼です。コーヒーを飲んでも眠たくなることが多かったのですが、昼食後にガムを嚙むことを習慣化したところ、日中の覚醒を維持できるようになりました。
【おまけ】著者監修のECサイト
著者の西野精治氏が監修をつとめる記事の一覧です。上の動画はその記事の中で紹介されていたもので、書籍に書かれている内容も一部配信されています。
また、西野精治氏が代表を務めるブレインスリープが運営しているECサイト「zzzLand(ズーランド)」というものもあります。
寝具、家電、書籍、食品など、睡眠の質を上げることをコンセプトに設立されたサイトですので、気になる方はチェックしてましょう。
まとめ

本書でも繰り返し述べられていますが、睡眠と覚醒は表裏一体です。質の良い睡眠は、良質なパフォーマンスを生み、日中の過ごし方が良質な睡眠への一歩となるのです。
今回の記事で紹介した内容はごく一部で、体の生理機能や実証実験に基づいたエビデンスに関しては、ほとんど割愛しているので、理屈とセットで実践することをお勧めします。
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オーディブルに関連する記事は、以前に書いたものがありますので、こちらを参照してください。登録及び退会手続きやアプリの機能、書籍の購入方法について画像付きで解説しています。
今回の内容は、これで以上となります。最後までご覧いただき、誠にありがとうございました。
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